世界規模の獣医療学術大会が開催され、ペットフードの研究開発を続けている、日本ヒルズ・コルゲート株式会社が犬猫の消化器疾患への新たなアプローチとして新製品を発表しました。
マイクロバイオームに着目した業界はじめての特別療法食です。
今、メディアや医療業界から話題になっている腸内環境研究者の福田真嗣先生を迎えて、消化器疾患とマイクロバイオームの活用、その製品について紹介します。
目次
マイクロバイオームとは
マイクロバイオームとは、人間や動物の体の中に多くの細菌や微生物から構成されています。
そして消化吸収の働きや免疫力のバランスを調整したり他いろいろな働きをしてくれることがわかってきました。
細菌や微生物はバランスをとって存在してくれていればいいのですが、バランスが崩れると健康を害してしまいます。
いわゆる善玉菌、悪玉菌などと表現することもありますが、どちらも生態系にとっては必要なものです。
マイクロバイオームは、それらの細菌や微生物のバランスを整えてくれて、健康な生活へと導いてくれます。
ですからマイクロバイオームは、消化器系だけの健康にかぎらず、全身の健康にも関わって整えてくれます。
消化器疾患の下痢や軟便
消化器疾患である下痢や軟便は、愛犬・愛猫の苦痛だけでなく、飼い主にとっても悩みの種です。
人とペットとの関係に悩むことになりますし、毎日の排便の管理などにも困ったことになります。
そして何よりも飼い主にとっては、愛犬・愛猫が元気でいてくれてこそ笑顔でいられるのです。
そういうメールでの問い合わせも多いそうです。
ヒルズの新製品についてのセミナー
2019年9月26日(木)から29日(日)に「第10回アジア 小動物獣医師大会「FASAVA-TOKYO2019」が開催されました。
そこで、日本ヒルズ・コルゲート株式会社 (住所:東京都千代田区、代表取締役社長:瀬口 盛正)が、新製品であるマイクロバイオームについての発表がありました。
そこでは日本国内や海外からの様々な専門分野の方がセミナーし、また多くの聴講がありました。
現在研究されている真っ只中の報告が相次ぎ、大変勉強になりました。
その中で9月26日のヒルズからのセミナーでは、マイクロバイオームの有効活用、消化器ケアなどの特別療法食の発表がありました。
今、注目されている腸内細菌叢の機能や研究結果など福田真嗣先生からお話があり、また獣医師であるイヴィータ・ベクヴァローヴァ氏からはマイクロバイオームの有効活用についての話がありました。
※ 福田 真嗣先生/ 慶應義塾大学 先端生命科学研究所 特任教授
※イヴィータ・ベクヴァローヴァ (獣医師) / グローバル アカデミック& プロフェッショナル アフェアーズ ディレクター(ヒルズ ペットニュートリション)
腸内細菌叢の機能
福田医師は、ねずみの大腸を輪切りにした画像を見せてくれて腸の中の説明をしてくれました。
外側はぐるっと腸で、緑色の部分は腸内細菌です。
中の青色は食物繊維です。
腸の中は体の外側と説明がありました。
食べ物を食べるということは外側から栄養を取り込むことです。
食べることに注目はしていても、腸の中の微生物のことは目に見えないので考えられてきませんでした。
ところが、ここ数年、腸内細菌に関して注目が集まっています。
また先生は便のことを「茶色い宝石」と表現していました。
面白いですね。
便を見ることで全身の健康状態がわかるそうです。
そのことから便から情報を取り出し、病気を治すことにも取り組まれています。
たとえば健康な時に便を保管しておいて、病気になった時は自分の便から情報を取り出し使用するなどです。
食物を食べて排出された便は全世界で150万トンにもなるそうです。
これらを利用できないだろうか、と考えています。
下の図は腸に便が溜まってしまったところです。
良い腸内細菌叢をもった便を用いることでこの硬い便が治ったりするそうです。
こうして病気ゼロを目指して腸内細菌を研究されています。
また腸内細菌には種類があって、その種類にあった薬が選択されることが望ましいのです。
その腸内細菌の種類は各々の人によって違ってきます。
すると人によって薬の効き目は違ってくるのです。
ある人には効いても、他の人には効かないということになってしまっています。
ですから各々のその人に合った薬を選択する必要があるのです。
ペットも同じでそのペット固有に合った薬でないと効かなかったりします。
マイクロバイオームの有効活用
腸内細菌叢は、腸の健康と疾患に関与しています。
そのことに着目して腸内細菌を整えることをマイクロバイオームのを有効活用して目指しています。
腸内バイオームは消化管内のマイクロバイオームに作用します。
繊維反応性疾患に対する新しいテクノロジーとなっています。
取り入れることによって、安全で毎日の食事に取り入れることで消化器疾患の管理に役立てられることでしょう。
犬の症例
またいくつかの症例をあげて、その有効性を証明しました。
症例では犬の複数の品種でメス15頭、オス16頭のうち、22頭が完逐しました。
平均大便スコアは5分の2.6です。
またその便の状態は以下のようです。
いろいろな症例を検証して、導き出した療法の作用や結果をまとめています。
その結果、マイクロバイオームが繊維を代謝し、植物性化合物の有利を助け、植物性化合物をより生物活性の高い方へ活性化するとしています。
また軟便を24時間以内に改善した例もあったとの報告もありました。
日がたつにつれて、症状の改善が見られていました。
また犬がいきんでいた状態の改善も見られました。
猫の便秘と下痢にも
マイクロバイオームは猫においても規則正しい健康的な排便をサポートしました。
これにも多くの改善例がありました。
犬には便秘という症例は少ないのですが、猫にはあるようです。
「犬にはない」、というのを聞いてこれも面白いなと思いました。
また猫においては、下痢症状があるというのは多くあるようです。
下痢は飼い主にとってもストレスとなります。
お尻をふくのも大変です。
猫の慢性下痢の原因
以下の原因が考えられます。
◆感染性(細菌性・ウイルス性)・寄生虫性
◆腸重積・イレウス
◆代謝性・消化管外疾患
◆食事性不耐症・食事反応性腸症
◆慢性腸炎・IBD
◆腫瘍性疾患
これからの症状も腸内バイオームによって、下痢も健康な便になり、マイクロバイオームが腸内のバランスを整えたことがわかります。
腸内バイオームの嗜好性
犬と猫には、他の食物では食べてくれないということがありますが、腸内バイオームではそういうことがなかったのです。
8週間使いましたが、好んで食べてくれたそうです。
この「嗜好性がいい」ということはとても重要なことです。
そして良好なコンディションになりました。
また便の匂いの臭さが減ったという報告もありました。
ただ血便の猫には効かないということもありました。
ですが、期待がもてる療法です。
腸内バイオーム(猫)の特徴
◆独自の繊維ブレンド(アクティブバイオーム+)を配合
◆腸内細菌叢の栄養となり、酪酸・酢酸などのポストバイオティクスを増加させる
◆繊維に結合しているポリフェノールを遊離
◆軟便・便秘を健常な便に
犬の症例については、 スタンリー・マークス (獣医師, Ph.D.) が「「犬の慢性腸症に対する合理的なアプローチ:症例をベースとしたアプローチ法」として発表がありました。
またスーザン・リトル(獣医師)は「岩のように固い便をどう管理するか?:猫の便秘の管理法」 を発表しました。
まとめ
ヒルズはマイクロバイオームが活性化することを科学的に証明しました。
マイクロバイオームは消化器だけでなく、全身の健康を保つためにとても重要だということがよくわかりました。
腸内の生態系のバランスを整え、栄養を与える素晴らしい食物だと思いました。
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